あざが赤く見える理由
血液は基本的に、 心臓→動脈→小動脈→毛細血管→小静脈→静脈→心臓→‥という循環を繰り返す。毛細血管で組織と酸素だとかブドウ糖だとかの交換をする。これは肺を通過する循環でも全身を巡る循環でも大雑把に言って当てはまる。PWSはこの内、一部の真皮を通過する毛細血管に異常をきたす疾患である。
注)PWSには小動脈に異常がある場合、毛細血管に異常がある場合、小静脈に異常がある場合、それらの複合、があり、動脈系程色は赤みを帯びて静脈系ほど色は青紫色を示す。母斑の色が赤色から青紫色に変わるのは、病変の程度の比率が動脈系から静脈系にシフトするためなのだろうか?
それではなぜ赤いあざという症状をきたすのかを順に述べたい。目に見えて赤いあざがある部分、その部分は赤血球の数が他の皮膚に比べて多い。なぜ多いかというと、主に毛細血管や小静脈の拡張によるところが多い。例えて言うならば、一枚の白い紙に複数本の赤い線を引くとして、その本数が等しい場合、一本一本の太さがより太い場合のほうが距離をおいてその紙を見たとき赤く見える、ということだろうか。
しかし一方、血管の拡張を認めないタイプも存在する。これについての詳細はわからないので分かり次第追記したい。また、この場合はこれ以後の説明が全く通用しない。
異常な血管がある場所、皮膚について
皮膚は表皮(epidermis)と真皮(dermis)とに分けられ、表皮は外界に接する層、真皮はより深部に位置する層となる。よく歩いた後に皮が分離する時があるが、その分離した皮が表皮で、その下のじゅくじゅくした部分が真皮である。真皮はまた、刺青をするときに色素を注入することでよく知られる。PWSの病変部もまた真皮である。真皮の全層、つまり、乳頭層(papillary layer)から網状層(reticular layer)が病変部になりうる可能性がある。ただ傾向として浅層、乳頭下層から真皮網状層上層にとどまるタイプが多い。病変部が存在する深さは治療の難易に大きく影響する。浅いものはレーザーが届きやすいため治療しやすく、深いものは届きにくく難しい傾向にある。拡張血管の太さはどの深さでも変わらないが、深層になるにつれその割合は低下する。
外界
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表皮
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真皮
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皮下組織
であり、真皮の表皮内に食い込んでいる部分が乳頭層、その下が乳頭下層、その下が網状層である。より詳しく知りたい方は群馬大学医学部 解剖学第一講座へ。index→電子図書館・組織ミュージアム→【各論】外皮→2.指頭皮膚or3.足底皮膚、で検鏡像及びスケッチを見ることができる。
異常な血管について
拡張血管の、加齢による血管の拡大は進行性である。非拡張血管から拡張血管へのスイッチは起こらないという。→J Invest Dermatol. 1980 Mar;74(3):154-7. (再掲)つまり、あざのない部分は時間が経ってもあざはできないが、あざがある部分は進行的に成長するということである。加齢による色調の変化や隆起性の変化もこれにより説明できると思われる。特に、隆起性の変化は血管壁の肥厚性変化によるものと説明される。深層の血管も加齢により拡張の度合いが増してくるため、厚くなってくる、という表現をすることがある。色調の変化は赤血球の酸素飽和度の低下が原因であると思われるが、動脈と静脈の血管構造の特徴の違いがどう関係しているのだろうか?
内皮細胞のターンオーバーの亢進はない。→Plast Reconstr Surg. 1982 Mar;69(3):412-22.(再掲)つまり、これは腫瘍性の病変ではないことを指し示すと考えられる。また、血管壁そのものの構成成分は正常のものとPWSのものと変わりはない。→Dermatologica. 1988;176(5):243-50.この事実は、血管の拡張は血管が脆くなってしまったから血管拡張が起こる、という解釈を否定する。
血管が拡張してしまう理由
それではなぜ血管は拡張してしまうのか。病変部では血管の神経支配が弱まっているから、と考えられる。視覚的にも神経の異常が伺われる。顔面領域では三叉神経の分枝に沿ったあざの配置が見られるし、あざの配置が左右どちらかという片側性が観察できるということからも伺われる。実際に病変部の神経を数えてみると、拡張血管周辺では神経の数が著しく減少していたという報告がある。→Arch Dermatol. 1986 Feb;122(2):177-9. 毛細血管部位の自律神経支配は交感神経支配が優位であるため、その支配が弱まると副交感神経支配優位になり血管の拡張が起こる。また、神経を介して血管を拡張、収縮させる薬剤にもよく反応しないため→Br J Dermatol. 1990 May;122(5):615-22. 間違いないところではないのだろうか。
神経が減ってしまう理由
それではなぜ神経の数が減ってしまうのか。一つには遺伝子に関係があるそうだ。→Am J Hum Genet. 2003 Dec;73(6):1240-9. Epub 2003 Nov 24.ただこれは、一つの家族性のPWSに限られるもので、しかも家族性のものは散発性のものと比べて稀な例である。この段階において、PWSの原因は今を持って解明されていないということになるのだろう。