病院探しについて

まず専門医のいる病院を探す。現在日本では専門医制度があるので、それを参考に探すとよい。血管腫の治療に最も関係するのは形成外科学会が認定する形成外科専門医である。日本形成外科学会認定の専門医一覧から探すとよい。

診療科について

病院によっては形成外科ではなく皮膚科がPWSの治療を行っている病院もある。全国的に、扱う疾患を形成外科と皮膚科で振り分けているわけではなく、病院毎により振り分けが異なるためこのようなことになっている。

掛かるべき医師について

平成16年6月1日現在、日本形成外科学会は学会員数4089人、専門医数1441人を擁する。他の日本専門医認定制機構に加盟する学会の専門医については有限責任中間法人日本専門医認定制機構を参照のこと。

上記専門医は形成外科の専門であり、その一分野である単純性血管腫、血管腫・血管奇形の専門医は存在しない。しかしながら病院によって取り扱う疾患の偏りがあり、単純性血管腫の症例数が多い病院は存在する。精力的に単純性血管腫について研究している医師もまた同様。それら医師は他の一般的な専門医に比して、単純性血管腫の治療に通じていると考えてよい。

卑近な表現だが、単純性血管腫に強い医師は埋もれることはない。症例数が多いのならば患者の間で有名である。熱心に研究している医師ならば、雑誌の投稿や書籍の執筆等で世間の目に多く触れられている。以上を参考に"強い"医師を探すことができる。そしてそれら医師が"血管腫の専門医"と呼ばれることもある。しかし自らを"血管腫の専門医"と標榜することは決して出来ない。

治療の必要性について

PWSは先天性疾患であり、根治するためにはその先天的素因を治療することが必要。しかしそもそも、その素因が何かということすら現状では解明されていないので根治的治療は不可能である。現在では対症療法のみしかない。治療を目的とした時の受診科は、形成外科である。

また、美容的な問題に留まる場合は治療は必ずしも必要ではない。この考え方はやや古く聞こえるが、全ての人に必要ではないとしているわけではない。必要と感じる人には治療は必要である。過去、"PWSは美容的な問題であるため保険適用は認められない"と考えられていたが、現在では"治療の是非は患者さんのご意思にお任せします。もし治療する場合は保険が適用されるのでご安心ください"という考え方が一般的か。

治療の手段について

1st choiceはパルス発振型の色素レーザー(PDL)である。ダイレーザーとも言う。die laserではなく、dye laserである。昔は髪を染めることをカラーではなく、ヘアダイと言っていました。そのダイ。期待する効果は、赤あざの退色である。第一選択とはいえ、このPDLはまだまだ不完全な部分がある。後ほどに述べるVbeam然りである。現時点の第一選択であって、まだまだ発展途上である。発展途上ではあるものの、よほどの事が無い限り最初の治療はPDL一択だと思われる。

波長585-590nm、パルス照射時間300-500μsecの機種がメジャー。機種名で言うとCandelaのSPTL-1bが有名。他には、NiiCのDO101やJMECのPhotoGenicaもある。後述するCandelaのVbeamやCynosureのV-starもダイレーザーに属する。

レーザー治療の保険について

これらPDLには保険適用があり、照射面積が、10cm^2以下の場合は2170点、それから10cm^2増える毎に500点加算される。いくら大きくても点数の最大値は2170点*4=8680点である。つまり、150cm^2以上の照射面積ならばいくら照射しても値段は一定。1点あたり10円のため、一回の治療費は21700円から86800円、さらに3割負担(2割負担)のため、6510円(4340円)から26040円(17360円)となる。保険適用は3ヶ月に一度以上の照射には認められないため、治療間隔もこれに合わしているのが実情。

レーザー治療の痛みについて

レーザーを照射した時、疼痛が起こる。これは輪ゴムで強くパチンとやる程度と表現される。程度の問題ではあるものの、我慢できないほどの痛みではないと思われる。とはいえ、痛みの感じ方は人それぞれ。我慢できないほど痛いかもしれないし、全然痛くないのかもしれない。

そのため、じっと我慢の子を実践できる小児ならば無麻酔で照射が可能。それよりももっと小さい乳幼児の手術の場合には暴れないようにするために催眠剤や精神安定剤、全身麻酔等を用いる必要がある。また、乳幼児は神経の発達がまで十分ではないためそれほど痛くはない、と言う人もいる。

それはあんまりだ。そこまでする必要はない、と考えるのも一つの考え方だし、最善を尽くすために今は我慢をして欲しい、と考えるのもまた一つの考え方だと思う。いずれにしても、治療を受ける乳幼児本人が最も利益を得られるであろう選択をすることが肝要である。

Vbeamについて

更に最近はパルス幅可変型のウルトラロングパルス色素レーザーがPWSに対して極めて有用であることがわかってきている。商品名はVbeam(Candela社)やV-star(Cynosure社)という。その効果は従来のパルス幅固定式の色素レーザーを凌駕するという。効果がなかった例に対して効果が出てきた、治療限界に至った例において限界を打ち破った、という報告がある。現行の色素レーザーでは治療できなかったものを治療できたこともあり、寄せられる期待は大きい。

パルス幅は450μsec-40msecと長く、波長も595nmと長い。長いパルス幅により太い血管をも標的とし、長い波長により深い部位の治療も可能になった。色素レーザーでは皮下1.2mm程度までだったが、こちらでは1.3-1.5mm程度の血管まで届く。また、このレーザーの特殊装備としてDCD(Dynamic Cooling Device)が挙げられる。これはレーザーを当てる直前に冷却ガスを被照射野に噴出するものである。これにより表皮の障害を防止し、従来に比し強いエネルギーのレーザーを安全に使用することができる。さらに、冷却による痛覚鈍麻が起こるため疼痛も低減できる。しかしパルス幅可変型のウルトラロングパルス色素レーザーは臨床応用されているものの、保険適用にならない。一刻も早い適用が望まれている

レーザーの作用機序について

色素レーザーは赤血球内にある酸化ヘモグロビンがよく吸収する波長を短時間パルス照射し、周りの組織を破壊することなく小血管のみを熱破壊するという原理で用いられる。

治療開始時期について

治療開始時期は、年齢が低いほどよりより治療成績を得られやすいと言われてきた。それは経験を基に言われてきたことだろう。その理由は、病変部の面積が成長と共に拡大するためレーザー照射回数が増えてしまうこと、成長につれて日焼けしたり皮膚が厚くなり(厚顔無恥)、レーザー光の深達性が悪くなること、が挙げられた。が、低年齢の治療開始はあくまでよい結果を得られる可能性が高まる、というだけで、これから治療を受けようとする成人の方が落胆する必要はない。

しかし一方、幼時期の治療と、それ以降の治療で治療成績はなかったとする報告がある。→N Engl J Med. 1998 Apr 9;338(15):1028-33. これはきちんと比較したものであり、情報として信頼に値する。病理学的には、低年齢患者ほど標的となる毛細血管の拡張がそれほどでもないため、レーザーの"効き"が弱い為であると考えられる。以上より、治療時期について焦ること、治療時期を逸したと悔やむ必要はないだろう。

ところが、レーザー治療時期が精神面に大きく影響を与えるという。

場所に関係なく、PWSが小児の深層心理に与える影響は大きい。早期治療はこれらの影響を軽減させるため、早期治療には価値がある。→Br J Dermatol. 1998 Jul;139(1):59-65.

7歳を超える患者の80%はPWSがなくなれば人生が今よりもよくなると答えた。85%はPWSが人生に若干の否定的な方向で影響を与えていると答えた。45%は他の同年代よりも自尊心が低く、PWSを持つ大多数は自身を否定的に受け止めてしまっている。自尊心、異性との接触、社会的関係、学校接触諸々、治療はよい影響を与える。早期の治療はそれらに対してよりよい影響を与える。→Dermatol Surg. 2000 Mar;26(3):190-6.

治療効果に両者違いはないが、早期治療が精神面に好影響を与える、とまとめることが出来るのではないか。親の立場からも早期治療は精神面に好影響を与える可能性がある。しかしもっとも、治療時期にゴールデンタイムはなく、ご両親と患者本人が治療を希望した時が最も適切な時期であると思われる。

また、色素レーザーは予防的な意味合いも持つ。前述のとおりPWSは進行性の疾患だからである。どれくらいの頻度の照射が予防につながるのか具体的なことはわからないが、現状のあざの状況でも別にかまわないが、後々隆起や結節性の変化があったら嫌だ、という場合でも医療機関に相談する価値がある。

色素レーザー登場以前の治療について

色素レーザーが登場するまでにも色々な治療法が試みられてきた。最初はルビーレーザーが用いられた。その後アルゴンレーザーが用いられた。これらは治療効果が良好とは言えず、瘢痕が残る副作用が生じやすかった。そのため一部の専門家により行われていたに過ぎなかった。このような状況は1990年代初期まで続いていたという。色素レーザーはその後に開発された。

しかしさらに古くには、放射線療法が用いられてきた。放射線療法はPWSには全くの無効であった。過去のPWSに対する放射線治療は皮膚癌発生のリスクファクターになりうるとの報告があるので、放射線治療経験者は定期的な受診をする等、用心するべきだと思われる。→Dermatol Surg. 2004 Sep;30(9):1241-5.

また、ドライアイス圧抵法も以前はかなり行われた。ある程度の効果はあった。しかしその一方色調にムラができてしまうため、整容的に満足が得られない場合が多かった。植皮は現在でも行われるが、その際は十分に医師と相談するべきである。口唇部のPWSは肥大するが、これに対して外科的に切除することもできる。

現在の第一選択は前述したとおり、色素レーザーである。もちろん他の治療法も存在する。しかしそれらはあくまで第一選択足りえない事情があることを記憶するべきだろう。

銅蒸気レーザー

Nd:YAG(Neodymium Yttrium-Aluminum-Garnet)レーザー

分子式Y3Al5O12で表されるYAGの内、Y3+の一部をNd3+に置換したものを媒質に用いたレーザー。波長は1064nmのものと、発振条件を変更することにより1320nmのものの二つがある。更に1064nmのものは第二光調波を用いることができ、その波長は532nmである。

KTP(Potassium titanyl phosphate)

532nmの波長を持つ緑色のレーザー。この波長はヘモグロビンの吸収曲線の第一ピークに近い。PTPではなくてKTPなのはPotassiumは元素K、つまりカリウムのことに由来するため。このレーザーは波長が1064nmであるYAGレーザーの第二光調波を用いる。PDLと違い治療後の紫斑を来たさないという利点がある。しかし瘢痕を形成してしまう可能性がPDLと比べて高いという欠点も持つ。

PDLに比してPWSをより薄くする可能性がある。一方、痕跡(7%)、色素沈着(10%)、治癒の遅延(3%)を起こす可能性がある。‥という報告がある。痕跡や色素沈着が一時的なものなのか恒久的なものなのかという記述はなし。→Br J Dermatol. 2001 Apr;144(4):814-7.

治療を始めた人は102人で、治療を完了させたのは49人。その内44人はPWSを著明に改善もしくは排除することができた。痛みのために治療を断念したのは2人であった。痕跡が残ったのは1人。持続性の炎症後色素沈着が2人に起きた。1人において一回の治療後に急性の腫れや水胞を伴う紅斑が現れた。‥という報告がある。→Lasers Med Sci. 2004;19(1):1-5. Epub 2004 Apr 14.やはりここでも、痕跡や色素沈着、紅斑等のその後の経過は書かれていない。

Kryptonレーザー

Intense Pulsed light(IPL)

IPLはレーザーではない。IPLは有色人種であるアジア人で有効ではないのだろうかとの報告がある。→Dermatol Surg. 2004 Jun;30(6):887-90; discussion 890-1.x% cleaningとは面積なのか光度なのかよくわからないが、7回の治療を通して、2/22の患者において25% cleaning未満、90%の患者において25% cleaning以上、50%の患者において25-50% cleaning、40%の患者において50% cleaning以上、9%の患者において75% cleaning以上、 0%の患者において100% cleaning、の結果を得たとのこと。

合併症(副作用)は、1/22の患者において水泡(水ぶくれ)、6/22の患者において24時間以上の腫れ、が見られたが1週間以内にいずれも消退したとのこと。

カバーマークやコンシーラーを用いた被覆化粧法(カバーメイク)も治療法と言えるだろう。PWSのような赤あざを被覆する治療薬(化粧品)を主に扱う会社も存在するので、興味がある場合は調べてみるとよいかもしれない。しかし、もしも子供に対してカバーメイクをしたいという場合は、自分達両親がしたいだけではないのか、と問う必要があると思われる。子供の意思に反した治療は自尊心を傷つける場合が多分にあるので注意するべきだろう。切除や植皮等といった形成外科的治療もある。痕跡が残る可能性が高いため、治療前に十分考える必要がある。